地方政治が危ない!―地域住民よ、密室政治を葬り去れ

 変わらないな。本書を一読して覚えた感想である。1995年に地方分権推進方が成立したタイミングにあわせて出版されているので、さすがに古びていると感じる部分もあるが、本書で指摘されている地方政治が抱えている問題(あるいは危機というべきかもしれない)は、10数年を経たいまでも、ほとんど変わっていないのではないか。


 例えば汚職や選挙に関わる不正については、2009年に入ってからも記憶にあるだけで、宝塚市西尾市千葉市北九州市などでそれぞれ性質は違うが、汚職等の不祥事が明るみに出た。まだ4半期、4ヶ月しかたっていないのにも関わらずである。


 あるいは、無投票についても、ミニ統一地方選がおこなわれた2009年4月に限って数字をみてみると、おこなわれた選挙の数は258(首長、各級の自治体議員選挙(補選も含む))。そのうち無投票だったのは69。全体の4分の一を越える約26.7パーセントの自治体で市民には選択の機会があたえられなかった。


 汚職は、「浜の真砂は尽きるとも世に盗人の種は尽きまじ」でどうしようもない面はあるのかもしれないが、無投票については、自治体の規模の大小に関わらず、議会(に限ったことではないが)が同じ制度を採っていることの矛盾が未だに解消されていないことが原因としてあると思う。


 それでも、95年当時と比べれば議会の自主的な改善への取り組みも増えたし(例えば三重県議会や矢祭町議会など)、情報公開も進んだ。心ある議員や行政マン、市民の各方面での努力があり、一歩一歩日本の地方政治はよい方に進んでいると思いたい。しかし、地方の危機的な状況にそうした変化は追いつけるのか不安も残る。


 本書は、95年時点の地方政治の状況についてデータ(例えば、市(区)町村長や道府県議会の無投票当選状況、町村議会議長任期など)を多く掲載し貴重な資料となっている。筆者は、その後も地方政治について精力的に取材を行い、いくつかの著作を発表している。まだ、積読になってしまっているが、手元にある「採点!47都道府県政」など他の筆者の著作に目を通すのが今から楽しみだ。

地方政治が危ない!―地域住民よ、密室政治を葬り去れ

地方政治が危ない!―地域住民よ、密室政治を葬り去れ