誰が紹介していたか忘れたのですが、何かの論文に引用されていいるのを目にしたことがあって、前々から読みたいと考えていました。ふと立ち寄った本屋で復刊されているのを見つけて、即購入しました。
本書で取り上げられる政治家の文章は少年時代の作文、日記、遺書など多岐にわたります。
宇垣一成の文章に現れる国家と自身を難なく同一化してしまえる感性には、身震いを覚えました。比較的よく知られた文章ですが、重光葵が巣鴨プリズンで著した書の中で、収監された要人達の振る舞いの愚劣さについて辛辣に記した文章については、やはり強く印象に残りました。
また、恋愛小説顔負けの描写で描かれる芦田均のロシアでの女性関係の思い出についた文章は、芦田に対して、それまで私が持っていたイメージを一変させられました。
取り上げられる文章は、政治家たちの人間像を鋭く描いていて、特に政治に強い興味がない方でも、一級の人間観察として十二分に楽しめる内容です。
- 作者: 武田泰淳
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1960/06/17
- メディア: 新書
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