今はまったく足を運ばなくなってしまいましたが、こどもの頃は、よく図書館に足を運んでいました。典型的なインドア派で時間があるなら本を読んでいたい子どもでした。
といっても図書館はまちの中心部にしかなく、農村部で育った私には、親に連れて行ってもらわないとなかなか行けないところにあったので、休日に親と出かけるたびに図書館に行くことをねだっていた事を覚えています。
私が、政治オタクなのを知る人からは、よく誤解を受けるのですが、別にこどもの頃から政治に関する本ばかりを読んでいたわけではなく 一般的な児童文学を読んで育ちました。
ファンタ
ジーやSF、
歴史小説が好きなどこにでもいる読書好きの少年でした。ただ、思い返すとその頃から
戸川猪佐武、
大下英治といった政治評論家の著作は読んでいましたから、三つ子の魂百までということなのかもしれません。
私が本格的に政治を分析した書物を手に取ったのは高校に入ってからのことで、こうしたことに興味を持つこどもとしては、どちらかといえば遅い方だったのではないかと思います。
この2冊を選んだことに特に理由はなく、タイトルの
インパクトが強く、たまたま目についたからだったと思いますが、前者は、当時の私には難解すぎました。大学入学後に
政治学科で西洋政治思想史の授業などを受けて初めて、少し理解ができるようになり、こんなことが書かれていたのかと驚いたぐらいでした。
後者については、手元に現物がないので内容が正確に思い出せませんが、
規制緩和や
地方分権、
道州制といった概念を始めて知った本でした。相当な部数が売れた本ですから、90年代に日本を席巻した「
改革保守」的な考え方を一般に普及させた一冊といえるかもしれません。
『平成維新』にはあまり影響を受けませんでしたが、90年代は
改革保守の時代だったと思います。私は漫画も好きなのですが、例えば、この頃に書かれた漫画で『
沈黙の艦隊』や『
加治隆介の議』で描かれる物語は
改革保守待望論の典型で
守旧派である
保守政党(旧
自民党)を
改革保守政党(ニュー
自民党)が打ち倒すというストーリーで、類似の展開は様々な創作物で取り上げられました。私自身もこうしたムードに少なからず影響を受けていたと当時をふりかえって思います。
この頃に読んだ本について後数冊触れたいと思います。
石川真澄『戦後政治史』は、忘れられない一冊です。私が、はじめて俯瞰した視点で戦後政治の歩みを知った本です。この本をきっかけに様々な政治史を読むようになり、今もそれは続いています。
私は、石川さんが書かれた本はほとんど読みましたが、他には『人物戦後政治』が強く印象に残っています。特に
西尾末広や羽生三七に関する描写は素晴らしく、
政治記者が引退後に取材対象だった政治家について回顧的な文章を書き出版することはよくありますが、初読から20年以上経っても記憶に残る類書にはない魅力があります。オーラルヒストリーに興味を持つきっかけにもなったと思っています。
大家清二(
田崎史郎)『
経世会死闘の七十日』は、
経世会の分裂劇を描いた政局ノンフィクションの金字塔です。確か、
筑紫哲也が帯に
シェイクスピアに匹敵するといったことを書いていたことを覚えています(さすがにそれは言いすぎでしょうが)。権力に惹かれる人間(政治家)の業を知ることができる1冊です。
その後、無数に政局を書いた本は読んだのですが、これを超える書には、未だに出会っていません。最近は、まったく同時代的な政局を追うことには興味がなくなってしまいこうした本はほとんど読まなくなりました。
部活の大会で東京に行った際に
丸善で買い求めたのが、
内橋克人『
規制緩和という名の悪夢』でした。
規制緩和についてその負の側面を日本に先行して70年代から
規制緩和を実施した
アメリカの航空産業などの取材を通じて具体的に指摘した内容で衝撃を受けました。
確か、『戦後政治史』と同時に出版されたのではなかったかと思いますが、
五十嵐敬喜・小川明雄『議会 官僚支配を超えて』を読んで、議会の仕組みを始めて触れました。
自治事務、
機関委任事務、
内閣法制局といった単語を始めて知ったのもこの本でした。また、
議員立法という仕組みがあることを知り、大学では
議員立法を学ぼうと思ったことを覚えています(ただし入学後すぐに挫折しました)。
こうした書物を読んでいた頃の私は、今から思えば、まだ、純粋だったのだと思います。自分が特別な存在に成れて、何か特別なことができる。心のどこかでそんな甘いことを考えていたのかもしれません。
こどもの頃のことを思い出すことはほとんどないのですが、意識的にふりかえるうちにお恥ずかしいことを書いている気がしてきて、消してしまおうかとも思いましたが、ここまで書いたので残しておくことにします。
10代の頃のふりかえりで3回を費やしており、しかもあまり選挙に関わりがない話に終始していますが、次回は私が初めて関わった選挙である96年総選挙の思い出をふりかえってみようと思います。