副産物、地方議会の世襲問題について

 実は、政治家の世襲問題は国会に限らず地方議会にもあります。特に中選挙区制をとっている県議会議員政令市の市議会議員は、地盤が固定化しており継承がやりやすいのか、保守系の議員を中心に世襲政治家は目立ちます。もちろん実際選挙に出馬する人間は世襲していようがしていまいが死に物狂いですから、ご本人たちにしてみればだからどうしたということなんでしょうが、実は客観的な数字で見ると地方選挙の競争率ってものすごく低いですからね。定数プラス数名という選挙は、合併が進んだ今でも珍しくはないですしね。


 県議会議員の選挙などは昔からそういう傾向は顕著で無投票は県でも一定率常にありますし、例えば定数2の選挙区に3人が出馬しています。激戦です、てな調子の報道がなされていることってよくありますけどは、冷静に考えてみれば1人しか落ちないのだから、当選する確立ってすごく高いんじゃあ・・・まあ、選挙戦自体は激烈な戦いが少数であるがゆえに交わされたのかもしれないですけど何かおかしいような・・・


 前々からこのテーマについての研究は、国政の世襲議員の問題以上に誰もほぼ誰も取り上げてこなかったのですが、例えば週刊ダイヤモンドの2008/8/30号によると、なんと大阪市議会では定数89人中22人が親や祖父母から地盤を継承した世襲議員とのことです。自民党会派に限ってみると32人中20人が世襲議員。いやーこの話にはびっくりしました。

週刊 ダイヤモンド 2008年 8/30号 [雑誌]

週刊 ダイヤモンド 2008年 8/30号 [雑誌]


 まあ、政治活動、地盤の手入れやら何やらに色んなコストがかかるとはいえ、色々と手当てを足していくと年収2000万を超える仕事ですから人気があるのも無理はないのかもしれません。その割りに、選挙の競争率は近頃の大学受験並みの低競争率ですからね。親の世代は苦労して作ってきた後援会に象徴される地盤を消滅させたり、赤の他人にもってかれるぐらいなら、親族に譲りたくなる気持ちもわからなくはないです。よっぽどあれば人じゃない限り神輿に乗っていれば、そりゃ当選できるでしょ。神輿を一から作らんと政治家になれん人間からするとジェラシーで頭が一杯になりそうになるのですが・・・心狭いかな。

 
 ともかく世襲を認めて特に問題視しない風土が間違いなくこの国にはありますよね。どさ回りの演歌歌手を地方のスター(貴族)として応援するような気持ちといいますか、まあ、うまくいえないんですけどそんなフィーリングです。それに実際お会いしてみると世襲(2世)議員の方は人間的にはいい感じの人が多いんですよね。たたき上げの政治家に比べるとマイルドな感じで普通の人って感じて憎めない。どら息子がやってんだろ?なんてイメージには反して、結構、真面目に仕事されている。


 とはいえ、だからいいってもんじゃないよな。なんの後ろ盾もない人間が志を立てて選挙に出ようとしたときに、自分の選挙区に世襲議員がいたら、まあ、まずまともに戦っても勝てんでしょうね。明らかにすごい参入障壁となる。世襲という参入障壁を打破するスーパー301条があればいいんですが(笑)残念ながら、日本には、それにあたる仕組みがない。ヨーロッパやアメリカ並みに政党が組織として機能していて、候補者になる人を公正に競争させて選別した上で、たまたまその候補者が世襲にあたる人だったというのならいいんでしょうが、日本がそのレベルまで行くのは自然にまかせてたら後100年やそこらはかかりそうですね。それで、ここに来てさすがに世襲禁止の内規をつくろうとの声が自民党民主党を問わずにあがってきているのでしょう。こんなに長々と書く気はなかったのですが、気がついたら長くなっていた。なぜだろう(笑)


 そうそう、エントリーにつけた「副産物」が何なのかですが、先ほどの河村たかし市長と議会の関係を調べるにあたって名古屋市議会議員の世襲状況もついでにわかる範囲で調べてみました。あまり厳密にしらべていないので(ちゃんと調べるためには過去の新聞の縮刷版を必死でよむぐらいしか方法がありません。あんま厳密な調査方法でもないか、でも、選管に世襲のデータがあるわけじゃないですしね(笑))見落としもあるかもしれませんが、まあ、定数75で定義をどうとるかにもよりますが、10人いるかいないかぐらいなので、大阪市議会のような状態ではない。まあ、安心(?)しましたが、それでもぼちぼち世襲をされている家系があることがわかりました。これが、「副産物」です。とりあえず、今日はオチはありません。