映画『はりぼて』鑑賞と政治の世界の競技人口を増やさなければいけない話

昨日は、畠山理仁さん(フリーランスライター)にお時間をいただけたので、ウラカタ選挙セミナーの打ち合わせのために東京に出かけました。
当初は、打ち合わせのためだけにうかがう予定だったのですが、畠山さんにお誘いいただき 映画『はりぼて』を一緒に鑑賞させていただきました。
前々から観たかったのですが、観に行く時間がないと思い諦めかけていたので機会をいただけてありがたかったです。今回の上映は監督の五百旗頭幸男さんと砂沢智史さんの舞台挨拶が上映後にあり、映画の中では描かれなかったことについてもお話しが聞けてとても学ぶところの多い時間となりました。
はりぼては、富山県ローカル局チューリップテレビ」が富山市議会議員の政務活動費の使途に事実と異なる報告があったことについてスクープしたことをきっかけに市議会のドンが辞職、半年で14人の議員が辞職することになるスキャンダルの顛末を描いています。
報道の結果として富山市議会の政務活動費の支出は、全国で最も厳しいとされる基準が設けられることとなります。ペンは剣よりも強し。一見すると腐敗した議会を正義のジャーナリストが倒す映画にも見えるのですが、そうした勧善懲悪ではないところにこのドキュメンタリー映画の魅力があります。
実際には、富山市議会には疑惑を抱えた議員が残り、辞職した議員よりも開き直って辞めなかった議員の方が地位を守るのに成功し、得をしたようにも見えます。
映画の中では明確に描かれないのですが、マスコミにも追求しきれない弱さを感じる場面もありました。追求するだけでは解決しないこともあるとも感じました。
また、政治、マスコミ双方どちらについても組織の中で生きていくことの難しさと苦しみを描いた映画という風にも私には見えました。
映画の主題ではないということなのでしょうが、もう少しチューリップテレビの内部の報道の方向性についての意思決定のプロセス、葛藤についても触れられるとよかったのではと思いましたが、限界があったということなのだと思います。
後は、もう少し市民の声を丁寧に取り上げてもよかったと感じました。ある種ステレオタイプに感じられる市民の姿の取り上げ方と思えその点は、残念に感じられました。もっとも市議会にそれだけ関心が持たれていないということの表れなのかもしれないとも思いましたが。
開き直って居座っている議員の支援者にもっとインタビューをとって欲しかったとも思いました。個々の政治家の支持する支援者の構造、心理に切り込んでほしいというのは私の関心が選挙にあるからなのかもしれません。
次から次に登場する市議たちの個性にも関心を持ちました。特に最長老の五本幸正市議のオーラルヒストリーは誰か取っておくといいのではと思いました。
ドキュメンタリーの常ですが、作品に取り上げられなかったこととが気になりました。
色々と勝手なことを書いてしまいましたが、困難な取材に取り組まれたチューリップテレビの皆さんの報道に対する真摯な姿勢には心から敬意を感じています。
終演後に畠山さんと食事を取りながらセミナーの打ち合わせをして映画の内容を振り返る中で、畠山さんから「競技人口を増やさなければいけない」という発言が何度かあったことが強く記憶に残りました。
私は、政治や選挙の世界を変えていくためには、その世界に関わる市民を増やすしかない。そのために政治や選挙の現在のルールや慣習を理解した上で課題意識を持って仕組みを変えていくことに取り組む人が必要となる。そうした意味が含まれた言葉だと捉えました。