村が消えた―平成大合併とは何だったのか

 平成の大合併とはなんだったのかを豊富な現地取材で得た事例を紹介しながら考える一冊。地方分権改革のキーマンだった野中広務梶原拓へのインタビューも掲載されており貴重な資料となっている。


 また、巻末に後藤田正晴氏のインタビューが掲載されている。後藤田氏が亡くなる半年ほど前におこなったもので、本来ならもう一度補足インタビューをして、完全なものに仕上げてから掲載する予定だったとのこと。そのためそれほど長いインタビューではないが、そのことでかえって地方分権の意義をコンパクトに説明した内容になっていて興味深い。


 例えば、「国から地方にという時に、公共が負担すべき役割は何か、地方の負担すべき役割とは何か、という役割分担をはっきりさせなければならない。」、「「与えられた地方自治」なんですよ。下から盛り上がって作った地方自治ではないんだ。だから、極端に言えば、自治体は国の出先機関の役割しか果たしていなかった。」、「地方分権を徹底してもらいたいなあ、というのが僕の基本的な考え方です。ただし。国民がどこに住もうと同じような生活ができる、政治の光を受けるとうのが望ましい。だから、全国的な均衡を保たなければならない。そういう需要があれば供給を保たねばならないのじゃないか。」


 少し長い引用になったが、内務官僚という中央集権国家日本の象徴的な官庁からキャリアをスタートさせて、実力者となった後藤田氏が、地方分権についてかなり積極的な考えを持っていたことがわかって興味深い。国民自らが考え自分の考えで作っていくのが地方自治なんだという意見が貫かれており、未だ未完の地方分権地方自治という現状を抱えている日本国民の心に訴えかけてくるインタビューであり貴重な証言である。この部分を読むためだけに購入しても損はない新書だと思う。

村が消えた―平成大合併とは何だったのか (祥伝社新書 (026))

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