首長

 国土の均衡ある発展などと言っていられた時代は終わり、日本のどこの街に住んでも同じサービスの受けられた時代ももちろん終わりが来た。もう、あたり前の認識になっているけれども本書で紹介されるさまざまな自治体の首長の取り組みを読んであらためてそんな思いを強くした。


 本書では、さまざまな改革派とよばれる首長の挑戦が取り上げられている。一昔前の話だなあと感じる話も入っているが、ここ10年ぐらいの筆者の雑誌連載を加筆修正して本にまとめたものなのでその点は、仕方がないのだろう。中には、その後晩節を汚した首長も紹介されていて、自治体経営というか、政治家の出処進退の難しさも感じた。特に首長は、議員と違い各自治体に1人しかいない町の王様であり、ひとつ間違うと王様は裸だという状態におちいることもありうる。改革派とよばれた首長でも多選を続ける中で、道を誤ることもある。「権不十年」、改革派知事の一期生の何人かが、惜しまれながらも2期、3期で知事の座を降りたことは、卓見だったといってよいと思う。


 また、現行の地方自治制度の範囲でも色々な工夫ができるのだなとも感じた。もちろん更なる中央から地方への権限の移譲、地方分権の推進派必要だ。しかし、自治体経営も企業をはじめとする他の組織と同じく、リーダーが一定の方向性、信念を持って真剣に取り組む姿勢を見せ、それが、職員や住民に伝染すれば案外簡単にまちは変わるのではないか、もちろんそういう状態を作り出すには並々ならぬ努力が必要だが、けってしてどのまちでもできないことではない。本書を読み終えてそうした思いを強くした。

首長

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