民主の敵―政権交代に大義あり (新潮新書 323)

 特別非凡な者は感じないが、日本のスタンダードな保守政治家のあり方の一つを示している人物なのだと感じた。選挙に関するバイタリティのすごさには脱帽するが、政策的なオリジナリティはあまり感じない。これで勝負するという一転突破のテーマがあるわけではないし、政策のパッケージに理念をかぶせて訴えかけるというところまで到達しているわけでもない。


 また、民主党でも野田氏より若い世代、長妻、馬渕、細野、福山、山井といった面子にあるスマートさは感じない。政治経歴も20年以上にわたっているで、どうしても55年体制の匂いがする政治家としてとられしまうのではないか。何か郷愁のようなものが感じられて私はそういう匂いは嫌いではないが、今後、彼が国民一般の支持を受けて民主党の党首になるイメージは描けなかった。それがいいことだとは思わないが、残念ながらこれからの政界ではメディア受けしない政治家は表で活躍することは難しいだろう。ただし、野田氏が党内の実力者の1人として力を持つことは十分ありうると思う。


 おそらく本書は近い将来、民主党のリーダーの1人として野田氏が立っていくために書かれたものだと思う。野田氏を含め民主党の若手が大きく傷ついた永田メール事件についてもなほどほどにふれて総括している(なぜか永田町ではスキャンダルに関わることを本人が文書で発表するとそれを水に流すという慣習がある)。また、これまであまり広くは語られてこなかった野田氏の生い立ちや政治的な歩みについても広く紹介されている。野田佳彦入門としては、よい形にまとまった新書だといっていいと思う。


 もう一点、小沢一郎が民由合併で党内に入ってきた際に違和感を感じたことを「モーニング娘天童よしみが加入した」と評しているのは、オヤジギャグの域を出ていないが、なかなか面白く印象に残った。

民主の敵―政権交代に大義あり (新潮新書)

民主の敵―政権交代に大義あり (新潮新書)