NPO入門 (日経文庫)

 俗な話からレビューをはじめて恐縮だが、実は、NPOの基礎的な概念や仕組み、事例を学べる概説書は本書の他にも多数出版されている。しかし、「NPO入門」をタイトルにうたった本は、長らく本書だけしかなかった(現在は、私の知る限り後2冊NPO入門という語が表題に入った書籍がある)。


 筆者は、NPO研究の世界ではよく知られた研究者であり、一定以上の知名度と実績がある学者で、例えば大学生などに聞くと、非営利組織論やNPO論のテキストで授業で使ったという話しもよく聞く。そのためタイトルだけのせいとはいわないが、2004年に新版が出版されているので、数あるNPO入門書の中ではかなり売れた本なのだと思う。正攻法で著作のタイトルをつけた著者か編集者の戦略勝ちだったのかもしれない。


 さて、横道にそれたが肝心の本書の中身についてだが、豊富なデータを駆使してNPOの世界を鳥瞰し、さまざまな分野のNPOの事例やマネジメント、NPO法の制度設計まで余すところなく書かれており、タイトルが何であれ、NPOの入門書としては最適な書として推薦できる一冊だといえる。


 改訂新版の出版からまた5年が経過し、その間、公益法人制度改革をはじめてとして、NPOにも一定の影響を与える大きな動きがいくつかこの間あったので、データをあらためたあらたな版の出版が望まれる。


 また、巻末にこの種の入門書にはあまり見かけない索引がついているのはありがたい。章ごとの参考文献のリストが掲載されているのも、NPOについて初めて学ぶ人がさらに理解を深める時の助けとなっている。


 このようにコンパクトで利便性の高い入門書であり、価格も手ごろで大抵の大型書店で簡単に手に入る(中古市場でも安価ですぐに入手できる)。良書としてお奨めしたい。

NPO入門 (日経文庫)

NPO入門 (日経文庫)