私は国政選挙にはあまり関わってこなかったのですが、ご縁があり、2014年と2017年の総選挙には候補者の陣営に入って選挙運動に参加しました。一方で2021年の今回は、特定の候補者の陣営に入っていません。また、2013年の参院選から続けていた選挙の現場を訪ねることもできていません。選挙に関しては異常なこだわりを持ち、時にはおかしいのではと言われることもある私としては、選挙中にとても静かな日常を過ごしており不思議な気持ちになっています。
実は、友人から、今回の総選挙のタイミングで選挙について話をしてほしいというお誘いを受けていました。残念ながら、私も彼も仕事が忙しくなってしまい今回は企画を断念することになったのですが、そこで私がお話ししたいと思っていたのは以下のようなことでした。
・これまで経験してきた選挙で感じた日本の選挙制度(選挙運動)の課題
・その課題を踏まえた上でどのような制度改正をおこなうとよいかの提案
私は選挙について講義をすることができるような能力のある人間ではありませんので、何かを教えるようなことはできませんが、上記の話題提供をしたうえで、皆さんと意見交換をできればと考えていました。
私が現場で学んできた日本の選挙の実態、規制を前提とした制度のあり方について文句を言いたいことはいくらでもあります。おかしいと声を上げることは、もちろん大事なことですが、それと同時にどういう形に選挙のあり方を変えていったらいいのか、具体的な制度改正のアイデアを考えてみたいと思いました。
例えば、数十年前まで国政選挙を中心に立会演説会という仕組みがありました。私が生まれた頃には廃止されていたので実際に見たことはないのですが、仕組みを改良して再度導入することはできないだろうかと思います。選挙期間中、毎日、数回程度の立会演説会に出席し候補者が政策について語ることができるようにする。そうすることで、選挙カーでの街頭活動や電話作戦を中心とした選挙の風景が変わると思います。
今は、直接、候補者の考えを聞きたくても街頭演説の現場を探して、運良くタイミングが合わないと機会を得ることができないのは不合理だと思います。個人演説会も開催は任意ですし、また、告知がなされるのが制度上、選挙期間中になりますから、予定を合わせて参加することは難しいと考え参加を断念する人もあるでしょう。立会演説会を復活させ、会場開催と合わせて動画配信もおこなえば相当な数の有権者が、候補者の生の声に自分の都合の良い時間に触れることができると思います。
もう一例をあげると、選挙期間中のチラシの作成・配布について厳しい規制を設けることに意味はあるのだろうかと思います。詳しい説明は省きますが、現在の制度では証紙ビラというビラを配布することができるのですが、これは実質、ほぼ新聞折り込みでしか配布できない不思議なビラです。
私は新聞を取っていませんのでいわゆる証紙ビラは一枚も手元に届きません。街頭演説の場や事務所に行けばもらえることは知っていますが、残念ながらそこまで出向く時間がありません。配布方法や作成枚数の制限を無くし、例えば、ポスティングを認めればよいと思います。
ちなみに初めて選挙運動に関わる方に候補者に関するチラシを自由に作って配ることができないという事実を伝えると、ほとんどの方は、それはおかしいと口を揃えて言われますので、この制度の改正に反対する人は少ないのではないでしょうか。
合わせて、証紙という謎のシールをビラに貼る廃止してしまえばよいと思います。国政選挙では証紙ビラを10万枚以上配布することができますが、このビラを配るためには証紙をビラに貼り付ける必要があります。そのため、一般に、選挙戦の最初の数日間は、どの陣営でも証紙ビラに証紙を貼る作業に追われていると思います。
このように少し考えるだけで選挙には疑問に感じることが多くでてきます。選挙の現場に入れば、現行の制度を前提として戦術を組み立て選挙に勝つために死力を尽くしますが、今回、現場にいないことで見えてきたものや整理できたことがあるような気がしています。