選挙運動に関わることの特殊性

 選挙(選挙運動)に関わる人にとっては、周知の事実が、大方の国民にとっては知らないことであるのを忘れてはいけないと思います。

 ここ数日、参院議員の比例代表選挙について、現在の制度が拘束名簿式と誤解している人に立て続けに会いました。皆さん、政治には関心が高い人たちでしたが、政治に関心があるのと選挙(選挙運動)に関心があるということは違うのだと感じました。

 苦い思い出が蘇りました。ある選挙の選対事務局長を務めた時のことです。投開票日に事務所で支援者に選挙運動期間中には電話で支持を呼びかけてよかったんですねと言われて愕然としたことがあります。まさかそんなことを知らないとは、誰からも聞いていないとは思いもよりませんでした。

 選挙結果は、僅かな票差で落選。未だにその時、何票差で落選したか忘れることができません。後悔しても仕切れませんでした。その後は、選挙に関わる際には自らが、最善を尽くすことは当然ですが、できる限り支援者には、丁寧に選挙運動としてやっていいことを説明することにしています。

 政治業界の人が、当然と思うことは当然ではないということです。自分が支持する候補者のために何かやりたいけれども何をやっていいのかわからないという人は、案外多いのではないかと思います。

 選挙が始まると陣営の中核にある人は、殺気立っていますから、なかなか一般の方が声をかけて、話を聞くという事は難しいのではないでしょうか。忙しい中でも心を落ち着けて、応援したいという気持ちで集まって下さる方の気持ちを活かすことを心がけたいです。

 考えてみると自分は、10代のはじめには、政局と選挙に強い関心を持っていましたし、大学は法学部政治学科に進み、社会人になってからも断続的ではありますが、選挙運動の実務に携わってきました。

 友人の選挙の選対に入り、敗北してからは、2度と同じ失敗を繰り返したくないという想いから、選挙運動に関わる機会を意識的に作ってきました。一時期は、選挙運動に関係する一般に入手できる書籍、資料を片っ端から買い集めていました。また、選挙運動のノウハウをわずかでもつかむために選挙のたびに自分にはまったく関係のない候補者の事務所を訪ねて回っていたこともあります。

 おそらく、こういう変人はそう多くはいないと思います。そういう人間の常識を一般に当てはめてはいけない。人は選挙のために生きているのではありません。選挙に関わっているとそんな当たり前のことをつい忘れてしまいます。自戒の思いを込めてこの文章を書きました。