「加藤紘一氏× 津田大介氏対談 SNSは日本の政治を動かすか?」を読んで

※以下は、Facebookに投稿した文章を加筆修正しまとめたものです。


 あの頃、私は、下記のような動きがあったことを知りませんでした。知っていれば、直接、加藤紘一衆議院議員にひょっとしたら話を聞きに行っていたかもしれません。当時は、多少は政治の現場にいて情報も持っているつもりだったのですが、こうした新しい動きが出ていることに気づきませんでした。インターネット上の政治や政治家に関するサイトも随分見ていたはずなのですが、東京でしかオフ会のような試みはないと思い込んでいた(いくつか具体的な話も知っていた)。TwitterSNSもなかった時代ですので、今ほど情報が拡散しにくかったとはいえ、残念です。しかし、いつも、肝心なことを見落とすんだなあ。自分は...

http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20120515/232058/?P=2
「津田:加藤の乱が終わった後、ネットではかなりバッシングも含めて書き込みやメールがあったんじゃないですか。

加藤:ありましたね。読んでいると、首くくりたくなるような「ばか、死ね、こら」とか「この世から去れ」みたいな書き込みが多いわけです。その投稿は全部取ってありますけど、生身の人間として、とても読むには耐えられない……。読めば読むほど暗くなりました。

 ただ、そのときに、ルーズリーフにボールペンの手書きの投稿が来たんです。愛知県の一宮市だったかな。字から見ておじいちゃんなんですが、加藤さん、あんた、失敗したけど、これを糧にまた成長してください、私は見ているよ、と。あの一通の手紙は何万件のメールよりも温かかったし、激励されたような気持ちになれました。

 その後に、ホームページを全国おわび行脚の申込場所にしたんです。20〜30人の集会があれば私は行くと宣言して、場所を募った。

ホームページを通して全国65地域をおわび行脚

津田:どのくらいの申し込みがあったんですか?

加藤:180件くらいだったと思います。そこからいろいろ選んで全国で65地域。北海道の端から鹿児島まで、1年ぐらいかけて回りました。」

 以下の記事の本筋ではないのですが、少し寄り道して加藤紘一衆議院議員津田大介さんが話しておられることは、私も感じていたことです。政治家の皆さんは、国会議員に限らず非常に朝が早いです。私は、かなり早い時間に朝は起きる方なので、よくわかるのですが、Facebookのニュースフィードを見ていると、早朝の5時前後から6時頃には投稿をはじめている議員さんが多いですね。朝の街宣や勉強会等に出かける前に書いているという方がおおいようです。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20120531/232799/?P=4
「津田:たぶん僕も含めて多くの人は、国会の中でどういう議論がおこなわれているのかが、新聞やテレビだけではよくわからないと感じているんです。そういうマスメディアでは見えにくい部分、国会内の生々しい部分を、議員がツイッターでつぶやき、それを読むことで、なるほど国会はそうやって動いているのかと僕らもわかってくる。

 そういう意味では、議員のツイッターというのは、マスメディアとは違う形で報道の役目を果たしつつあるし、そうした試みの繰り返しで、国民の政治に対する意識も少しずつ変わっていくようにも思います。

 加藤さんが思っている以上に、国会議員の方々にとっては当たり前のことが、僕らにとってはまったく未知だったりするんですよ。

加藤:そうかもしれませんね。朝8時から会合が始まるとか、地方議員は週末には地方に帰るとか、そんなことは議員から見れば当たり前のことだけど、けっこう知りたい人もいるんでしょうね。

津田:例えば民主党の逢坂(誠二)さんは、ツイッターをいち早く始めた議員ですけど、毎朝4時ぐらいに起きて、まず「おはようございます、今日の仕事を始めます」みたいな感じでつぶやくんです。ツイッターで逢坂さんをフォローしている人は、そういったつぶやきを見て、「ああ、政治家の人ってこんなに朝早くから活動しているんだ」と知るんですね。僕が政治家に取材したときも、すごく朝早い時間だったことがあります。そうやって朝のさまざまな会議で重要なことが決まっている場合もあるわけです。

 でも、そのことを知らない人にとっては、国会で寝ている議員がテレビなどで映されると、単にサボっているように見えてしまう。」

 3回に分けて掲載されたこの対談、とても中身の濃いものと感じました。現場の重要性は、政治家に限らずいかなる分野のプロも大事にする所だと思います。インターネットには、膨大な情報はあるけれども、そこから皮膚感覚を得ることはできない。匂いがないということだと捉えます。そして、政界ににおいては、特にその感覚を掴んでいないと思わぬ落とし穴にはまることが多々あるということなのでしょう。

 しかし、対談を読み終えて、インターネット選挙運動の解禁は、やはり、容易くはないと感じました。積極的に邪魔をする議員もいないが、進めようという議員は少ないのではないかと感じました。加藤紘一衆議院議員もインターネットの有用性を認めながらも、少なくともこの対談では、すぐに自分から行動をおこして流れを作ろうという気はなく、終始、徐々に試してみるかという構えを崩さなかったと感じました。ベテラン議員らしく慎重といいますか。もちろん、加藤紘一衆議院議員の感覚を国会議員全体の考えと捉えては、いけないですが、私には、何となくですが議会全体の雰囲気を象徴しているように思えてなりませんでした。

 インターネット選挙運動の解禁のためには、粘り強い取り組みが必要ですね。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20120604/232945/?rt=nocnt
「加藤:しょせんいつかは自由になるんでしょうね。

津田:いつなのかはまだ分からないですけど、方向としては、ネット選挙解禁は止められないと?」

http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20120604/232945/?P=3
「津田:やっぱり現場に行って学ばないと、本当に見えてこないことがたくさんあるということなんですね。

加藤:ありますね。なぜ農家は最初に本当のことを言わなかったのか。農家に尋ねましたよ。「自分たちの苦情、困窮する場面を正確に言って、それで国会議員を動かすというのが本来で、俺は1年目にその通りやったのに、あんたらに無視されたよ」と。

 でも、彼らの言い分は、どこの国でも本当の状況を言ったら封建領主から小作料を上げられたし、民主主義の政治体制では税金が上げられたんだと。

津田:仮に、農家の人がそれほど経済的に困ってなかったとして、それをバカ正直に言ったら、租税負担を大きくされてしまうんじゃないかと勘ぐるわけですか。

加藤:ええ。どこの国の農民だって本音は言わない。それを赤裸々に見いだしていくのが、保守政治家の真骨頂じゃなきゃいかんということなんだよね。そう考えると、こっちの方も血の滴るような現場の感覚を持っていないと、対等に言葉のやりとりができない。

 だから僕の感覚としては、ネットでいろいろ粉をかけても、本当に血の出るような本音は、やっぱり体を運んでじかに聞かないと出てこない。現場で問題点をぶつけて、大げさに言っているか、本音を言っているかを見なきゃいけない。

ネットは問題点を洗い出すツール

津田:ネットの大きな利点は、その問題点を洗い出したり、気づきやすい環境になったということなんです。つまり、きっかけが得やすくなったわけです。もちろん、そこから先に進むには現場に行って話を聞いたりとか、調べる必要が当然あると思いますが。」