NPO法コンメンタール―特定非営利活動促進法の逐条解説

 NPO法が施行された1998年12月にあわせて出版されたコンメンタール(法律の解釈書)。通常、官僚が書くことの多いコンメンタールを市民が書いたという意味で意義深く異色で稀有な書である。すでに絶版になっており、また、元々それほどの数が刷られていないのか中古市場でも手に入りにくい。復刊が望まれる。


 さすがに出版から10年経過しているため法文も幾度かの改正を経てかなり変更されており、古びてしまった面はあるが、未だに立法の趣旨や日本の非営利(公益)法人制度の歩み、諸外国の制度などについて概観するには最適にしてほとんど唯一の書といっていい。


 特に執筆陣の座談会は必読であるといえる。当時の時代の雰囲気を若い世代が触れ知ることができる座談会であり、また、NPO法の制定過程に関する重要な証言が数多く掲載されている。例えば雨宮氏が、監督の節が設けられたことにより所轄庁が大変な負担を背負い込むことになったと証言していることや掘田氏が、基本的に届出制でNPO法人の設立はできるようにすべきだったとの趣旨のことを述べておられることが印象に残った。


 座談会では、この他にNPO法の制定過程での論点から、「公益」、「市民」などについてどう考えるられていたか、官の側の論理と市民の意思の違いなどが解説されており大変興味深いものとなっている。


 また、すでに、本書では、先ごろ改正がおこなわれた公益法人制度の改革への方向が予見されていたり、NPO全体への税の優遇に関する議論や介護保険事業をめぐる社会福祉法人NPO法人との課税をめぐる相克についてもすでに書かれており、実は、その後おこなわれたNPO法をめぐる論争の論点は10年前にほぼ出尽くしていたのではとも感じた。


 NPO法をめぐって多くの議論が各地でおこってくることを期待するとして座談会は終わっている。その後各地でさまざまな議論がNPO法をめぐっておこなわれてきたことは周知の事実だが、そうした多くの議論の積み重ねを踏まえつつ、再び同じメンバーで集まって座談会をおこないぜひ出版してほしい。この10年でNPO法も幾度か改正がおこなわれた。特に新公益法人制度の導入にともなう改正は重要だったと思う。一番いいのは、コンメンタールの新版を出版していだくことだが、執筆者の皆さんは現在も現役の方ばかりでなかなかこれだけの大部の著作を共同で形にすることは難しいかもしれない。


 しかし、座談会だけでも実現していただくと、この執筆陣ならばこの10年のNPO法とそれを取り巻いた市民の動きを概観することができるのではないだろうか。NPO法10年を節目とした著作はいくつか出版されているが、ぜひ、市民が作ったコンメンタールを書いた方の現在のNPONPO法に対する意見を聞いてみたいと思うのは私だけだろうか。

NPO法コンメンタール―特定非営利活動促進法の逐条解説

NPO法コンメンタール―特定非営利活動促進法の逐条解説


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