労働再規制―反転の構図を読みとく (ちくま新書 748)

 はじめ本書を手に取ったとき正直面食らった、内容のことでなく、文体がですます調、それも口語に近いような文体で書かれていたからである。よく読んでみると筆者のブログ記事を下敷きに新書にまとめたものだということで、文体がそうなるのはある意味必然と理解できた。私もブログの地の文は口語に近い形で書いているので考えてみるとこれは珍しいことではない。ただ、テーマの硬さと文体のギャップがどうも最後まで気になって仕方がなかった。


 さて、文体についてはともかくとして、本書は、新自由主義的労働政策に対する反転攻勢が官僚の側からおこっていることを審議会の議事録や報道等の公開資料からあきらかにしていく。その点に注目すると大変よくできた政策過程論のテキストとして読むこともできる。筆者の論を是とするか非とするかは人それぞれとして、その気になれば筆者のような研究者でなくとも公開情報を駆使して一定の説得力のある議論をブログ等で通じて展開することができる。そうした可能性を提示した書ともいえるのではないか。

労働再規制―反転の構図を読みとく (ちくま新書)

労働再規制―反転の構図を読みとく (ちくま新書)