ほとんど本書のシュミレーションで分析されたとおりに自民党の人事はおこなわれ、出世すると指摘されていた議員(あたりまえのことだが、若くして当選した2世議員が多い)が出世している。
本書は、当選回数による人事システムが完全に確立していた80年代後半に書かれた。その後の歴史を知るものが現代の目で見ると、20年経っても自民党は当選回数による人事システム代わる仕組み作ることができなかったということがよくわかる。途中病気やスキャンダルで退場した議員については、もちろん筆者たちは預言者でないのではないので予測し切れていないが、当選回数と年齢をきちんとリストにして比較してみていくだけで特に高度な技術を必要とせずに簡単に将来を予測するシュミレーションがおこなえることがわかる。キャラクターや議員本人の実力という変数はもちろんあるが、有力者になると考えられる議員の数はそれほど多くはなく、勘で予測しても将来の総理を当てることは十分可能だ。
この20年の間には、自民党の野党転落や自社さ政権の樹立などの例外的な変数はあったし、小泉政権などで大臣の抜擢人事はおこなわれるなど人事システムを根幹から変えるチャンスは自民党には何度があったと思うが、機会を活かすことができなかったのは2世議員オールスターズと化した麻生政権を見ると良くわかる。大臣ポストだけでなく、この20年で例えば部会の長などの党役員ポストや、国会人事などの登用の仕組みがどう変化したのか、あるいはしなかったのかの分析は、さまざまな研究者がおこなっているが、私は根本的には自民党は体質転換を図ることができなかったと感じている。
昨今の自民党内の一部叩き上げ議員による人事システム改革への動きはおそらく「ゆらぎ」はおこせても抜本的な体質の変化にはつながらないのではと思う。政権交代しても日本が変わるかどうかはわからないが、少なくとも今一度政権交代をしないと自民党は変われないのではないかと感じている。
本書は古い本なので表紙のイメージ画像は表示されないが、表紙には、加藤紘一、渡辺美智雄、藤波孝生、森喜朗、橋本龍太郎、小沢一郎、海部俊樹らの若かりし頃の写真が掲載されていて、彼らがあの頃、自民党のホープだと捉えられていたのだということがわかる。総理になれた人もなれなかった人もいるが、皆、名は残した。20年以上たった今改めてみるとある種の感慨を覚えずにはいられない。
- 作者: 伊藤昌哉,福岡政行
- 出版社/メーカー: 第一企画出版
- 発売日: 1988/03
- メディア: 単行本
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