火の国、風の国物語6 哀鴻遍野 (富士見ファンタジア文庫)

 もう、ほとんどライトノベルは読まなくなったが、最近評判の高い、本書の最新刊を手にとった。ライトノベルという形態の特色性ゆえに、キャラクターの造形には力が入っており、ある種の萌えキャラなどももちろん登場する。そちらにばかり目が行ってしまうかもしれないが、本書では、貴族による封建体制が農民反乱を経て崩壊し、絶対王政の確立につながり、そしてその後の民主主義社会の樹立に向かっての萌芽へのプロセスが暗に描かれておりなかなか面白い。今回も一農民の視点で戦争を描く試み(ほぼ単行本の半分の分量が割かれている)がなされており、単純な活劇に終わらず興味深い。無論、そんなことは関係なしにヒーロー、ヒロインたちの胸をすく活躍を見ているだけでも十分に面白いのだが。