読んでいるうちにこれは、以前ハードカバーで読んだ作品だと気付いた。こんな記憶違いは滅多にしないのに。
だからといってこの小説がつまらないというわけではもちろんない。テンポのよい会話を中心に物語は進んでいく。私が考える大沢在昌らしい小説だった。永久初版作家といわれたころの作品に似て、小気味よいほど和製ハードボイルド小説の提携といえる物語だと感じた。一匹狼的な主人公にさまざまな背景をもった登場人物が絡んでくる。もちろん魅力的な謎の女も登場しストーリーの核心に関わってくる。ありきたりと切って捨てる人もいるかもしれないが、でも、こういうグルーヴがいいのだ。余計なものはいらない。
それにしても残念というか、もったいないのは、作中のある人物が職業とする「マキ」に関連するエピソード。それだけで一篇の物語が書ける題材なのではと思うのだが、割合さらっと扱って終わっている。巨匠は思い切りがいいということかな。
- 作者: 大沢在昌
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2009/02/18
- メディア: 新書
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