民主党のアメリカ共和党のアメリカ (日経プレミアシリーズ 15) 2009年04月19日 20:09

 日本の出版会はアメリカと名のつく本がよほど好きなようだ。例えばAmazonの和書検索で「アメリカ」と検索すると22,906件との検索結果が出る。社会・政治のカテゴリーだけに限っても7118件、また「米国」と付く書籍が2,588件、この検索はおそらく本のタイトルによるものだけしか抽出していないだろうから内容がアメリカに関するものはもっと出版されていると思う(いずれも2009年4月19日現在の数)。


 さて、4年に一度のアメリカ大統領選の年には、毎回、アメリカ論本、アメリカ大統領本、アメリカ大統領選挙本といった「読んでくれればお手軽にアメリカ理解が進むよ」といった本が、必ずといっていいほど数多く出版され書店に並んでいる印象を持つ。特にオバマで盛り上がった2008年の選挙熱は日本の出版業界にも伝わったようで数多くの書籍が出版された。


 12月だけに限ってもざっと見るだけで、オバマとタイトルに付く本が3冊、アメリカ大統領が1冊、アメリカ入門が1冊、アメリカ文化論が3冊、その他政策に関係するものが4冊、出版されている(上記と同じくAmazonの和書検索社会・政治のカテゴリーでの検索による。分類は私の主観による。法律専門書等は複数出版されていたが除いた)。実は、1年間分見てみようかなと思ったが、12月分を見ただけで全体では軽く何十冊と書籍が出てくるので途中で挫折した(笑)


 これだけの本が出版されているとなるとブームに乗ったいい加減な内容の便乗本も時にはある。そうした本を誤って買ってしまい大変後悔することは避けたい。本書は新書という手に取りやすい形式ながら、そうした危険なお手軽本ではない、大変読み応えのある本である。ハリウッド映画やプロスポーツといった取っ付きやすいテーマからはじめて、民主党共和党の違いの本質やアメリカ政治の対立軸がどこにあるのかを論じていく。


 特に第三章「民主党のカルチャー、共和党のカルチャー」の中の「地球の危機」もまったく別のテイストにの項が特に興味深かった。小惑星が地球に接近し人類が滅亡の危機にさらされるという設定はまったく同じ映画「アルマゲトン」と「ディープインパクト」。この2作品が見事に民主党共和党のカルチャーの違いを反映した内容となっていることを解説していくくだりは見事だった。


 読後に、私はまだ見た事がなかった「ディープインパクト」をわざわざ見てしまったほど感心してしまった。どちらの映画がどの党の価値観を反映しているのかは、ぜひ、本書を読んで自分で確かめて欲しい。現代アメリカ政治の入門書として自信を持ってお薦めしたい。


 ちなみに、私は「アルマゲトン」のノリに惹かれつつも「ディープインパクト」が内包する価値観もわからないではないという立場なので、政治的にはアメリカでは中道右派といったところだろうか。仮にアメリカで政治家になったら右からも左からも攻められる上に選挙に弱い政治家になりそうだなあ(笑)