スポーツには、中学のとき部活でやった卓球は例外としてまったく縁がないと思い込んでいた私ですが、よーく考え見ると小学校の頃、野球のチームに入っていたことを思い出しました。入ったというよりは、先輩に無理やり入れられたという感じでしたけど。今思うとあのチームは何だったのか、小学校ですし部活は普通ないから、子ども会か何かのチームだったのかなあれは。
それぐらいしか野球経験のない私ですので野球のことはさっぱり知りません。高校野球についても積極的に見た記憶はありません。ただ、高校野球とは、甲子園を目指して若者が必死で頑張る。そんな私はもう忘れてしまった「夢」や「情熱」の世界だと何となく思っていました。特待生制度問題という単語は報道で聞いた記憶はあり、何らかの問題が高校野球の世界にはあるのだなとおぼろげながらに考えたことはあったのですが、正直、何となく聞き流していました。
しかし、本書を読んでその印象は大きく変わりました、高校野球の世界に巣くう「野球ゴロ」とでも表すべき大人たちが有望な選手はもちろんのこと、ほどほどに有望と思われる子も含め食い物にしている構造が完全に成立していることを筆者は全国を歩いて取材し暴いていきます。問題は、特待生制度だけでなく多面に渉っており少年野球から高校野球にいたるまで金にまつわる闇がおおっているとの印象を受けました。
そして本書の後半では日本高野連が特待生問題に関して設置した有識者会議での議論の顛末が紹介されるのですが、そこでおこなわれた議論は筆者の言葉を借りるならまさしく「儀式」であったといわざるをえません。筆者の取材力と野球、スポーツに対する真摯な熱意には素直に敬意を表しつつも、読了後、後味の悪さが残る一冊でした。おそらく筆者自信も歯がゆい思いをされているのではと感じました。「第2幕」があることを願ってやみません。
- 作者: 軍司貞則
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2008/03/01
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