税の攻防―大蔵官僚 四半世紀の戦争

 大学時代に購入し新刊で読みました。発売日は98年4月、この頃私は、金融ビックバンや長銀日債銀問題、それにともなう省庁再編がメディアで大きく報じられる中で、大蔵行政に強い関心を持っていました。そうした流れの中で本書を手にとったと記憶しています。

 実家の書庫にしまい込んであるため残念ながら現在手元に本書がありません。記憶に頼って本文を書いています。記憶違いがありましたら、ご指摘ください。

 私は、本書を通じてはじめてVAT(Value Added Tax:付加価値税)のことや内税、外税の概念を知りました。

 現在、税と社会保障の一体改革で消費税増税について国会で議論がおこなわれていますが、税は、国防や外交と並んで国家の根幹をなすものだと考えています。

 著者の岸宣仁氏は、元読売新聞のフリージャーナリストであり、経済部でキャリアを積んだ記者です。著者略歴によると経済関連の官庁はほとんど取材した経験があるようで、大蔵省も担当しています。後に「財務官僚の出世と人事」という財務官僚の出世競争について詳しく取り上げた著作を書いていますので、大蔵省(財務省)に食い込んでいるジャーナリストといっていいと思います。

http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000032466188&Action_id=121&Sza_id=C0&Rec_id=1008&Rec_lg=100812#tyosya
岸 宣仁 (キシ ノブヒト)  
1949年埼玉県生まれ。73年東京外国語大学卒業後、読売新聞社入社。横浜支局を経て経済部に勤務し、大蔵省、通産省農水省、経企庁、日銀、証券、経団連機械、重工クラブなどを担当した。91年読売新聞社を退社、経済ジャーナリストとして知的財産権、技術開発、雇用問題などをテーマにしている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

 本書では、いかにして大型間接税(後の消費税)の導入がおこなわれたのか、高度成長が終わった時代から四半世紀に渡ってそのあゆみが詳細に描かれます。私が特に印象に残っているのは、冒頭、若き日の内海孚氏(後の財務官)がヨーロッパで買い物をしてはじめてVATを知るシーン(内海氏ではなかったかもしれません。このあたり記憶が曖昧です)と89年の参院選で勝利し、参院で多数はとなった野党が消費税廃止法案をとりまとめるのですが(取りまとめの中心になったのは、後の大蔵大臣久保亘氏だったと記憶視しています。この点もやや曖昧です。堀昌雄氏だったかもしれません。参院が主戦場だったのでおそらく久保氏だと思いますが)、官僚の協力をほとんど得られなかったため、法案作成は困難を極め、審議入してからも法案の欠陥が度々指摘されたというエピソードです。

 消費税論議にあらためて注目が集まっている今日、もう一度、読んでみたい本です。


税の攻防―大蔵官僚 四半世紀の戦争

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財務官僚の出世と人事 (文春新書)

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