日本の政治史に彗星のように現われて、軌跡を残しながら消えていった「さきがけ」という政党とともに生きた政治家井出正一の回想録。わかりやすさが求められるテレビ時代には、地味でも誠実かつ堅実に仕事をこなすだけでは政治家は評価されず力を持つことは難しい。本書に目を通しながらそんなことを考えた。
政治家とは結果責任である。そうであるのなら「さきがけ」は、政治史の中で大きな役割を果たしたとの評価を受けることは難しいのだろう。しかし、歴史に「もし」はないが、例えば、羽田務が解散総選挙をおこなっていたら、自社さ政権がなかったら、武村正義が大蔵大臣にならなかったらどんな歴史が創られていただろう。ほんのわずかなボタンの掛け違いで、歴史は大きく変わる可能性を秘めている。ひょっとしたら日本に寛容な保守主義を掲げる保守政党が生まれ一定の勢力を持つ、そんな歴史がありえたかもしれない。そう夢想してしまった。
日本の保守政治の多様性を学びたい方には必読の一冊。
- 作者: 井出正一
- 出版社/メーカー: 三省堂
- 発売日: 1999/07
- メディア: 単行本
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