社会が育てる市民運動―アメリカのNPO制度 (社会新報ブックレット (3))

 まだ、日本にNPOという言葉がほとんど紹介されていなかった頃にアメリカサンフランシスコのNPOを現地調査し報告したブックレット。アメリカのNPOは民間資金(寄付、会費、民間助成など)を中心に運営されているのではなく、税財源から公的支出によって支えられていることなど今日的視点から見ても価値ある情報が掲載されている。


 いまさらだが、アメリカのNPOの社会的システムを構築する力強さには驚かされる。日本のNPOに具体的な制度を提案し、国民の支持を得て公的なシステムに落とし込んでいくだけの力がまったくないわけではないが、アメリカにはまだかなわないと感じた。また、NPOが社会に自然に溶け込んでいる姿にもある種の羨望を覚えずにいられなかった。


 90年代から順を追ってNPOを論じた文献を読み込んでいるが、NPOをめぐる論点は、ほぼ、この時代に出し尽くされていると感じる。これからの10年は、そうした古びた論点を乗り越えていく時代になることを望む。