重松清の連載が面白い「星をつくった男 阿久悠と、その時代」

 週刊現代で小説家重松清が連載している「星をつくった男 阿久悠と、その時代」というノンフィクションが面白い。重松清はとても上手い作家だとよく聞くのだけど週刊誌でコラムを読む程度で恥ずかしながら小説は未だに読んだことがない。そんなわけで特にファンというわけではないし、週刊現代を毎週買うわけでもないから、この阿久悠を取り上げたノンフィクションも毎回読んでいるわけではない。にもかかわらず連載を飛び飛びでまったくつながらずに読んでいるのにいつも読み始めると止まらなくなる。


 実は、私は、歌の歌詞をあまり深く捉えて音楽を聴いてこなかった。10代の頃は洋楽のハードロックやへビィメタルばかり聞いていたのでノリ重視で歌詞の内容などまったく無視していた。そもそも読もうと思っても英語がさっぱりなので無理だったろうが。最近でこそ歌詞の内容も少しは聞き込むようになったけれど、そう深く意味を考えたりしているわけではなかった。しかし、この連載を読んでそういう音楽の聞き方というのは作詞家を冒涜していたのだと気付かされた。すべての作詞家が阿久悠ほどの業を抱えながら詞を書いているわけではないかもしれないが、詞を書くというのはこれほど重みのある行為だったのか、時に歌い手の心を蝕むほどに恐ろしいものだとは思いもしなかった。


 連載がいつまで続くのかわからないが、本にまとめられたら必ず購入したい。まとめられなかったら地元の図書館に足を運ぶか、国会図書館から取り寄せるしかないが、そういう手間が惜しくないノンフィクションだと思う。