コメは政なれど…―ウルグアイ・ラウンド異聞

 副題にあるとおり、まさしく日本の農政と国際交流についての「異聞」を近藤元次という農業交渉に命をかけて逝った一政治家についての回想を中心に描いた労作。ウルグアイラウンド交渉の内実に迫っており、その深いところまで理解を深めることができる一冊になっている。


 ほんの10数年には、まだ、たたき上げの地方から上がってきた力のある政治家が日本にもいた。近藤元次という政治家の名前は知っていたし、一般に考えられているよりも実力者であったということは聞いていたけれども、これほどの人物とは恥ずかしながら考えてはいなかった。真の意味での交渉能力と調整能力を培った政治家が今こそ必要な時であるはずなのに、現実は、世襲議員ばかりが幅を利かし、恵まれた環境で銀のさじを咥えて育ったような政治家ばかりが目立つ。そんな現在の日本政治の舞台にこそ近藤氏のような政治家がいてほしいと思う。だが、現実にはそんな政治家はもはや皆無に等しい。これは、そうした政治家を育てることができなかった私たち有権者の責任ということなのだろう。

コメは政なれど…―ウルグアイ・ラウンド異聞

コメは政なれど…―ウルグアイ・ラウンド異聞