戦前、いわゆる革新の側が議会政治を解体を声高に叫び(まあ、彼らの潜在的理念からいえば、あたりまえといえばあたりまえなんですが)保守の側に議会政治の解体に抗した政治家たちが多くいたことは、不思議とあまり知られていない。それは、結局のところ彼らの行為が抵抗に終わり実を結ばなかったからなのだろうが、だからといってそうした政治家たちがいたことを忘れてしまうのは、あまりに寂しいのではないか。
本書は、大政翼賛会への大きな流れができていく中で、院内交渉団体「同好会」に集ってその流れに抗した40人の政治家を1人ずつ取り上げたユニークな書である。元々は自民党の機関紙『自由民主』で連載された記事に加筆修正をおこなったものとのこと。自民党の機関紙は正直なところ読んだことはないが、なかなか面白い連載もあるのだなと本筋とは違うところで感心してしまった。
「自民党源流の代議士たち」と副題にはあるが、筆者も本書の中でふれているとおり、同好会には戦後、社会党に入った政治家も複数含まれており皆が自民党の結党を支えたわけではない。また、同好会に属さなかった政治家の中にも東方会の中野正剛のように軍部に抵抗した政治家がいたことも事実で、同好会のみが反軍、反大政翼賛会を主張したわけではない。しかし、戦前に時流に抗する勇気を持った政治家の一群があったことは、昭和の政治史を学ぶときに鬱々とした黒い雲を吹き払う、なにか爽やかな風のように私には感じられる。
大政翼賛会に抗した40人―自民党源流の代議士たち (朝日選書)
- 作者: 楠精一郎
- 出版社/メーカー: 朝日新聞社
- 発売日: 2006/07
- メディア: 単行本
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