つぎはぎ人生

 愛知県選出の元衆議院議員(1946〜1972まで、55年、72年落選。通算、当選10回。)で自民党の全国組織委員長(各種団体の対策にあたる役職、今は組織本部長という役職名になっているよう。多くの団体と関係をもつきっかけがいくらでもある役職のためうまくこのポストを務めあげると票や金につながるという説を聞いたことがある)を務めた辻寛一氏の回顧録(?)とも随想(?)ともいいいきれない不思議な筆致で書かれた書物。奇書とまではいはないが、一風変わった文体で政治家らしからぬ文士風の文体で書かれている。


 筆者は政治家としては、正直なところ日本政治史に名を残した大物とはいえないが、名古屋の中心街、栄でおでん屋「辻かん」を経営していた縁で芸能の世界との交友が深かったようで、芸どころ名古屋選出の国会議員らしく本書もそうした交遊録の紹介が多い。戦後政治の政局の動きなどを読みたくて読むと期待はずれに終わると思うが、芸能史や社会風俗を研究している人にとっては良書となるかもしれない。


 それにしても名古屋という土地は、不思議と大物保守政治家(愛知県でみると江崎真澄や総理を務めた海部俊樹のような例外はあるものの、彼らは尾張地域選出で名古屋の政治家ではない)を輩出してない。


 当落を繰り返すことが多い傾向にある都市部の選挙区だから仕方がないのかもしれないが、中には筆者のように比較的順調に当選回数を重ねた政治家がいたにもかかわらず、大臣になかなかなれなかったり、最後までなることのできない政治家が多かった。むしろ、こと名古屋だけに限っていうと野党民社党党首の春日一幸の方が、政局の節々に名前が登場し大物感があったぐらいだ。このあたりの事情を掘り下げた書があればぜひ読んでみたいものだ。

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