暴走老人! 2009年04月18日 15:13

 4/16(木)関西テレビのアンカー内の宮崎哲弥がコメンテーターを務めるニュースの哲論のコーナーで、高齢者の犯罪の問題が取り上げられていた。このコーナーでは、まず高齢者(65歳以上)犯罪が増えている現状が犯罪白書の統計を紹介する形で報告した。犯罪白書によると検挙された犯罪者数を2000年と2007年で比べたところ、少年犯罪は約3割減っているのに比べて高齢者の犯罪は約は2.4倍増えているという状況が報告された。


 次に実際の高齢者の犯罪事例が取り上げられた、ささいな理由から日本刀で人を殺した事件と寂しさから万引きを頻繁におこなっていたという事件の2例が紹介された。また、刑務所の受刑者に高齢者がしめる割合は先進諸国の中でずば抜けて多くなっていて、宮崎さんによると「福祉の最後の受け皿になるのではないかという関係者もいる」とのことだった。


 実際に犯罪を起こす理由をどう考えるか高齢者にインタビューで聞いたところ以下のような答えが返ってきていた。「金銭」、「アパートに引っ越したら孤立してしまっておかしく母がなった」、「自分ひとりで自分をコントロールすることが難しい」、「夫に先立たれて1人で寂しいが孫が近くに居るからなんとかなっている」、「年寄りにも悪いやつは一杯いる。メンツもあるのだろうが、素直になってもらわんといかん」、「日本が戦争に負けて、働けば働くほどどうのこうの。最後にはゆったりした人生、そういったものがくるだろうということでやりました。でも、現実はどうもそうはなってないですね。相談する先もあるのだろうが、それがわからずについついということではないか」。


 この回答を受けてキャスターからは、後期高齢者制度の問題などもあり高齢者が追い込まれているのではないかとのコメントがあった。宮崎さんは、高齢者が犯罪に走る原因を二つの要因に整理して解説した。まずは、貧困の問題「金銭的な問題があり、老後思い描いていたような、ゆったりとした生活が実現できていない」こと。もう一点は孤立の問題「孤立している。世代間で価値観が分断され、かってのような地域コミュニティも成立していないところが多い」こと。


 貧困の問題は、最終的には国に解決をゆだねるしかないが、孤立の問題はコミュニティの力を再生することで何とか解決していくしかないのではないかと考えている。具体的には、自警団が独居老人に声がけするのはどうかというアイデアを提案されていた。ともかく、団塊の世代が高齢化する中でますます高齢者が増える。このまま高齢者を犯罪に追い込むような社会にしてはいけない、かといって国が解決するということはできない、地域コミュニティが何とかするしかないという提起をしてコーナーは終了した。


 宮崎さんの問題提起と論点の整理巧みさや高齢者の生の声を聞けたこともあり、番組内では十数分程度のコーナーだったが、私自身、色々なことを考えさせられたコーナーだった。


 そして、このコーナーを聞いた後にふと思い出したのが、以前読んだ本書のことだった。筆者は小説家であり、統計的なデータなどを用いて論証をおこなうという本ではなく、ご自身が実際に街角などで高齢者と接した経験を紹介したり、その意味について感じたり、考えたことを書いているのだが、アンカーで議論されていた高齢者「孤立」に関することについても本書の中で触れていた記憶がある。


 世代によらず自由でありながら孤独を覚えるという、「個人の孤立」ということがいわれるようになって久しい気がするが、こと高齢者においては、特別に時代の変化から取り残された感覚(認識していない可能性もある)を覚える人が多いのではということを筆者は紹介していたと思う。


 価値観の多様化や物事のスピード化など自分達の時代(といってもほんの数十年程度の話なのだが)の常識とはあまりにかけ離れた今の常識なるものに遭遇したときの戸惑いの捌け口が、高齢者による突然の恫喝的な行為(例えば急に怒鳴りだす。暴れるなど)につながっているのでは。それが、暴走老人ともいえる高齢者が社会に多く見られるようになった原因なのではと述べていたのではなかったか。


 そうであるならば、確かに宮崎さんのいう様に何らかの人と人とのつながり(それが地域コミュニティでなくてももちろんいい)が問題を解決してくれる可能性は十分あると感じた。意識的に社会の側が高齢者とつながりを持つことによってこの「孤立」なる問題を突破することができるのではないか。その担い手となるのは、自治会や町内会であったりNPOであったり、趣味のサークルでも何でもいい。「暴走老人!」では、解決の部分をどの程度書いていたか、もしくは書いていなかったのか情けないことに忘れてしまったが、今一度、再読することで高齢者の「孤立」の問題について考え直してみたいと思った。

暴走老人!

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