地方の神々―現代ニッポンの首長 2009年04月12日 09:12

　20数年前、全国には市町村が3,252あった。2009年4月1日現在、市町村の数は1,777。平成の大合併を経てほぼ半減したといえる。

　個人的には、1982年に集中的に取材をおこなって出版された筆者の前著『地方政治家』の方が、一人ひとりの政治家の人間性に深く迫っていて面白いと感じたが、本書のあとがきを読む限り筆者は本書の方が気に入っているようだ。首長の政策を批評することに目的にするのではなく、できるだけ首長の日常を紹介し読者に知ってもらうことにテーマとしている。

　あとがきによると本書の取材は84年の秋から約2年間に渉って全国の首長の取材をおこなった成果を87年にまとめて出版したものとのこと。取り上げられた首長は24名、いずれも劣らぬ個性の持ち主ばかり。ルポの内容ももちろん面白いのだが、掲載されている写真の首長の顔に私は心引かれた。貧相な表現だが、一言でいうと濃いオヤジの顔だ。今の日本には少なくなった深みのある大人の男の顔。もっとも現在も現役の政治家や学者として活躍している首長も取り上げられているので褒めすぎかもしれないが。

　4半世紀近くの年月が経っているので彼らの自治体運営の結果がどのようにでているのかを分析することもできるだろうが、私は行政の専門家でも何でもない。ここでは彼らのその後の歩みを紹介し筆をおきたい。

●地方の神々のその後の歩み
長谷部秀見北海道美深町長
・周辺町村との合併を目指すも実現せず。単独町制を選択。長谷部には97年名誉町民の称号が町より送られている。
島本虎三北海道仁木町長
・2期8年経て87年勇退。89年没。仁木町は、平成の大合併には参加せず現在も単独町制を選択。
工藤正青森市長
・4期目在職中の89年没。平成の大合併で青森市は旧浪岡町と合併した。
中村仁山形県最上町長
・一部に宮城県鳴子町との越境合併を模索する動きがあったが、実現せず。最上町は、単独町制を選択。
須佐昭三新潟県入広瀬村長
・2004年に小出町、堀之内町、湯之谷村、広神村、守門村との合併により魚沼市となった。
皆川圭一郎千葉県鎌ヶ谷市長
・井上裕元参院議長の元秘書らによる汚職事件で、受託収賄罪で実刑が確定、服役。2006年没。
土屋正忠東京都武蔵野市長
・2003年まで6期当選、2005年の衆院選で自民党より立候補、当選。
大下勝正東京都町田市長
・90年まで5期市長を務め引退。
寺澤晴男東京都三宅村長
・現在、三宅村村議会議員。村議から村長そして再び村議になるという珍しい経歴を持つ。2000年の選挙では次点と1票差で当選。
富野暉一郎神奈川県逗子市長
・92年市長退任後、94年島根大法文学部教授に就任、99年から龍谷大法学部教授就任。地方自治論、地域経営論などを専門とする研究者として活躍している。
宮原栄吉長野県青木村長
・47年〜93年まで12期村長を務めた（多選記録2位タイ）2002年、上田市、小県郡丸子町等で構成する任意合併協議会設立準備会への参加を拒否し、合併せず単独村制を選んだ。
山田隆士長野県上郷町長
・93年、長野県飯田市に編入合併。
渡辺朗静岡県沼津市長
・90年引退。92年没。長男の渡辺周は、91年に民社党公認で静岡県議選に立候補し当選、96年の衆院選に民主党公認で立候補し当選、現在4期目。
川上幸男愛知県富山村長
・日本で最も人口が少ない村として有名だったが、2005年に豊根村へ編入され，その座を高知県土佐郡大川村に譲った。
西山孝愛知県豊田市長
・88年まで3期にわたり市長を務めた。2002年没。
斉藤一松岐阜県徳山村長
・ダムの建設のため87年に旧藤橋村に編入合併し、廃止された。徳山ダムは、2008年5月に完成した。
松本政雄富山県小矢部市長
・86年4期目の半ばで急逝。平成の大合併では単独市制を選択。
小城利重奈良県斑鳩町長
・初当選後も順調に当選を続け現在6期目。平成の大合併では、住民投票の結果合併反対が多数となり、単独町制を選択。
井上信也大阪摂津市長
・市長を85年まで3期務める。89年参院選比例区からサラリーマン新党で出馬落選、92年参院選比例区から社会党で出馬落選。
宮崎辰雄神戸市長
・89年まで5期、20年にわたって市長を務めた。市長退任後は、財団法人神戸都市問題研究所理事長として活動した。2000年没。
藤井久男山口県鹿野町長
・山口県都濃郡で最後まで残っていた町であったが、2003年に徳山市、新南陽市、熊毛町と合併し、新たに周南市となった。
三木俊治徳島市長
・市長3期目に辞職し、96年衆院選に自民党から出馬、落選。現在、阿波製紙会長。
野村良二鹿児島県喜界町長
・2000年まで4期にわたり町長を務めた。2001年没。
山内徳信沖縄県読谷村長
・98年まで6期、24年村長を務めた後、98年より沖縄県出納帳、同年退任。2007年参議院議員選挙比例区に社民党から立候補、当選。

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