日の名残り 2006年06月30日 00:51

 人生のすべてをすべてを懸けるに値する仕事をなしたと思っていた。プロとして恥じない実力を培ってきた。誇りも感じていた。しかし、実は自分が自分に好意をよせてくれる女性の気持ちを慮ることすらできない、そんなどうしようもない人間だったと人生の道行きの終わりになって気づいたとき、取り戻せない時間の流れを感じた彼の胸に去来するのはいかなる感情なのか。読後そんな思いを感じた小説でした。時間を戻すことは、誰にもできず。今この瞬間の決断が未来を決めていく。そんな、当たり前の事実、あまりにも切ない現実が誰の前にも広がっている。そうした感慨を抱きました。

日の名残り (ハヤカワepi文庫)

日の名残り (ハヤカワepi文庫)