報知新聞に連載された大久保についての聞き書きをまとめたもの。兄弟、子弟、同僚、後輩、多岐に渡る人々に取材し、その証言によって大久保の維新から明治政府、渡欧期、晩年に至るまでを回想する。
近年でも著名な政治家について追悼録が編まれることは時折目にすることがある。しかし、新聞がこうした広い範囲にインタビューをおこなって一人の指導者の像を浮き彫りにしようと試みた例を私は知らない(いわゆる三角大福中までは一定の試みがあるが、ここでいう近年は、ここ10年〜20年をイメージしている)。
たとえば、100年後に21世紀が歴史として語られるようになった時、為した事の正否ともかく、小泉純一郎は、21世紀初めの日本政治を語る上でもっとも重要な政治家として取り上げられていることだろう。しかし、彼が、大久保のような文脈で語られることはおそらくはない。時代状況が違うと言ってしまえばそれまでだが、何が違うのだろうか。完全に私の中で整理はついていないが、指導者がある意味、国家に並び立つほどの存在感を持ちえた時代があったということだろう。
本章では、印象に残る証言が多く取り上げられているが、幾人かが、西郷と大久保の交わりについて証言しているが目を引く。余人には窺い知ることのできない交友というものが世にはあり得る。今日そうしたものがありうるか、そうしたことを考え、感じる為だけに読んでも十分意義ある読み物だと思う。
- 作者: 佐々木克
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2004/11/11
- メディア: 文庫
- 購入: 2人 クリック: 39回
- この商品を含むブログ (22件) を見る